税効果会計の会計手続きの対象となるのは一時差異です。
なお、一時差異の把握方法には資産負債法と繰延法の二つの方法がありますが、現行制度会計上は資産負債法が採用されています。したがって資産負債法を前提に一時差異について確認します。
それでは一時差異が具体的にどんなものなのか、一時差異の定義からこのページではみていきましょう。
一時差異の定義
一時差異とは、会計と税務のズレのうち、そのズレがいずれ解消するものをいいます。
ズレとは、会計上費用計上されているものの、税務上費用とならないようなものをいいます。会計用語としてズレのことを差異と呼びます。
税効果会計は会計と税務の差異のうちいずれその差異がいずれ解消されるものを一時差異と位置付け、税効果会計の会計手続きの対象とします。
一時差異の具体例
一時差異の具体例としては次のものがあります。
- 減価償却超過額
- 貸倒引当金繰入超過額
- その他有価証券の評価差額
- 法人税の未収計上額
- 住民税の未収計上額
- 売上計上漏れ
- 売上原価計上漏れ
- 資産評価益否認
- その他有価証券の評価差額
- 繰越欠損金
- 繰越外国税額控除
- 事業税の未払計上額
ここであることに気づいた方が多いのではないでしょうか。
一時差異の具体例を見ていただければわかるとおり、一時差異とは、法人税の課税所得の計算上別表4で加減算調整されるものがほとんどです。
一時差異は別表5(一)に記載される
一時差異には、別表4で加減算調整されるものとそうではないものがあります。
別表4で加減算調整される一時差異は、法人税申告書別表5(一)に利益積立金として記載されています。
別表5(一)に記載されない一時差異
前述のとおり、一時差異は大半が別表4で加減算調整されるものですが、わずかにそうではないものがあります。
代表的なものが次の三つです。
- 繰越欠損金
- 事業税の未払計上額
- その他有価証券の評価差額
永久差異
ちなみに、税効果会計の対象としない差異を永久差異といい、永久差異は、その差異が永久に解消することがないものです。
永久差異には次のようなものが該当します。
- 交際費等の損金算入限度超過額
- 寄付金の損金不算入額
- 損金経理延滞税等
- 受取配当金の益金不算入額