法人の所得に対する税金としては法人税が最も一般的ですが、実は法人税以外にも法人の所得を課税標準とする税金が3つあります。それが地方法人住民税、法人住民税、法人事業税です。
法定実行税率(ほうていじっこうぜいりつ)とは、法人税だけでなく、その地方法人住民税、法人住民税、法人事業税といった法人税以外の法人の所得を課税標準とする税金を加味した所得に対して課せられる税金の総合的な負担割合をいいます。
さらに詳しく書きますと、法人住民税や法人事業税は全国一律ではなく、法人が所在する都道府県によって異なります。
しかも、多国籍企業を前提とすると、法人税率は国によって異なりますので、その会社または子会社が所在している国によっても法定実効税率は異なります。さらにさらに、税率というものは皆さんご存じのとおり税制改正によって毎年変わりますし法人の規模によっても異なります。
法人住民税と法人事業税
法人が稼いだ所得には公益法人などの法人税が課されない法人を除いて法人税が課されますが、法人税以外にも利益にかかる税金が存在します。その代表的なものが法人住民税、法人事業税です。
したがって、企業の実質的な儲けを計算するためには法人税だけではなく、法人住民税や法人事業税のうち利益を課税標準とする部分も考慮する必要があります。
法人住民税とは
法人住民税とは、総務省のサイトでは法人が地方団体に納めるスポーツジムの利用料であると説明されています。
皆さん、トレーニングジムを思い浮かべてみてください。個人会員や法人会員は、ジムのトレーニングマシンなどを利用するために、ジムに会費を支払っています。言い換えると、個人や法人は、ジムが提供するサービスを享受するために、ジムの構成員として会費を負担しあっているということです。ここで地域社会に目を移すと、法人も個人と同様に、地方団体(都道府県と市町村)が提供する行政サービスを享受しています。そこで地方団体は地域社会の会費として、その構成員である法人にも、個人と同様に幅広く負担を求めています。これを法人住民税といいます。総務省
法人事業税とは
法人事業税とは、総務省のサイトでは次のように説明されています。要するに行政サービスの負担金ということのようです。
例えば、法人がスーパーマーケットを経営しようとするとき、店舗、商品、従業者以外にどういったものが必要になるでしょうか。その店舗につながる道路や上下水道などが整備されている必要がありますね。このように、法人はその事業活動を行うに当たって地方団体からさまざまな行政サービスを受けています。法人はこうした行政サービスに必要な経費を負担すべきである考えられています。この考え方に基づき課税されるのが、法人事業税です。総務省
地方法人税とは
ちなみに、地方法人税とは、地域間の財政力の格差を是正するために財政力の乏しい自治体に交付する地方交付税の財源として令和元年10月より徴収が始まった国税です。
法定実効税率の使い方
ちなみに令和6年現在、中小企業の法定実効税率は33%ほどです。
ここで法定実効税率を使うことで会社が稼いだ所得のうち、税引き後にいくら手元に残るかが分かります。所得に(1-法定実効税率)を乗じるだけです。
法定実効税率の計算Excelテンプレート
法定実効税率は地域ごとに住民税率が異なったりするため、手計算するのはかなり大変です。そこで、簡単な入力のみで法定実効税率を自動計算するExcelテンプレートを作成しました。 |
法人税の計算についての詳細はこちらをご覧ください |
法定実効税率とは
法定実効税率とは、法人税だけでなく、法人住民税や法人事業税等のうち利益を課税標準とする部分も考慮した企業の利益に対する実質的な税金負担割合をいいます。法定実効税率の基本算式は次のとおりです。
法定実効税率={法人税率23.2%×(1+地方法人税率10.3%+法人住民税率7.0%)+法人事業税率7.0%+特別法人事業税率2.59%}/(1+法人事業税率7.0%+特別法人事業税率2.59%)
税効果会計における法定実効税率の考え方
法定実効税率の算式は上記のとおりですが、法人税率は現在どんどん引き下げられている傾向にあるため、年度によって法人税率が異なることが多いです。
その場合において、税効果会計において使用する法定実効税率を、一時差異が発生した事業年度の税率を使う考え方、一時差異が解消する事業年度の税率を使う考え方と二通りの考え方があります。
日本の会計基準においては税効果会計について資産負債法の考え方を採用しているため、一時差異が解消すると見込まれる将来の税率を使用して法定実効税率の算定を行います。
複数の事業所を有する場合の法定実効税率
法定実効税率を算定するにあたって、国内に複数の事業所を有する場合には、それぞれの事業所の所在する都道府県で設定された地方税率を使用します。
これは、法人税率は全国一律ですが、住民税率については各地方自治体の裁量により一定の範囲内で独自に税率を設定することが認められているためです。