税効果会計とは

繰延税金資産

2024年12月8日

繰延税金資産とは、税効果会計を適用している場合において、将来減算一時差異が生じたことにより発生した法人税の前払いでその差異が解消する会計期間まで繰延処理するために貸借対照表に計上された資産です。

法人税率が引き下げられると企業業績が下がる?

ここ数年ずっと法人税率の引き下げが頻繁に行われています。法人税率が引き下げられると企業側にとっては法人税の負担が減少するため普通に考えればプラスのメリットがあるはずです。

しかし、よくニュースでよく耳にするのが、法人税率引き下げによって業績の下方修正を行ったというものです。政府は法人を優遇するために法人税率の引き下げを政策としておこなっています。それなのに業績の下方修正とは変だと思いませんか?

法人税率が引き下げられると企業業績が下がるカラクリ

繰延税金資産は、その計上時点において将来における差異解消時点で見込まれる法人税の軽減額、すなわち税金の前払効果部分に資産性を見出し資産として計上したものです。

そして繰延税金資産として計上する金額は「一時差異×実効税率」で計算されます。したがって法人税率の引き下げが行われると、上の算式の実効税率部分が減少します。それに伴って法人税等の前払効果が減少し、繰延税金資産を取り崩す必要がでてきて減収要因となるのです。

簡単な具体例をあげますと、100万円の将来減算一時差異について差異解消が見込まれる10年後の実効税率が40%と見込まれる場合の繰延税金資産は40万円(100万円×40%)となります。

この40万円は貸借対照表に繰延税金資産として計上されますが、それから5年後に法人税率が30%に引き下げられた場合には、差異解消時点で見込まれる法人税等の前払い効果が30万円(100万円×30%)に減少するため繰延税金資産を30万円(100万円×30%)に取り崩さなければならないこととなります。

繰延税金資産の計算

繰延税金資産については、以前までワンイヤールールにより流動資産又は固定資産に表示することとなっていましたが、会計基準の改正により常に固定資産投資その他の資産として表示することに改められています。ご注意ください。

繰延税金資産には実体がなく法的な権利でもない

このように繰延税金資産とは、資産として貸借対照表に計上されますが、例えば土地や建物のような実体のある財産はないです。なおかつ、売掛金や貸付金、有価証券のような法的な権利でもありません。

しかし、将来の課税期間において課税所得を減額するという用益潜在力があることから当然、貸借対照表に資産として計上すべきものとなります。

繰延税金資産の計上は真実な会計報告

繰延税金資産の計上は会計基準に基づいて行われます。したがって、繰延税金資産の計上は会計ルールに基づいて行われている限り、企業会計原則の真実性の原則の要請にかなうものであり、真実な会計報告として認められます。

一時差異が発生しても繰延税金資産を計上しない場合がある

繰延税金資産は将来的に継続して赤字が見込まれる場合には差異解消時において課税所得を減額する効果が見込めないことから繰延税金資産として計上せず、税効果会計の対象としません。

繰延税金負債

繰延税金負債とは、税効果会計を適用している場合において、将来加算一時差異が生じたことにより発生した法人税の未払い当期にを見越処理するため貸借対照表に計上された負債です。将来加算一時差異には特別償却準備金の積立や売上原価計上漏れ等が該当します。

これら将来加算一時差異の発生により当期の課税所得が減少し当期の法人税の納付額が減少することとなりますが、差異解消時において課税所得を増額させる効果を有します。したがって当期に負担すべき税金費用を将来の会計期間に繰り延べたと考え、これを負債に計上します。

 

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